『ミリキタニの猫』

 サクラメントに生まれ、広島に育ち、日本が軍国主義を歩み始めた頃兵学校行きを嫌って絵の道を極めるために10代で再び渡米というか帰国。そして大戦中日系人として敵性外国人として強制収容所に入れられ、市民権を放棄。収容所を出たあとに様々な職を経験するも、やがて路上生活者となり絵を描いてわずかな生活を立てていたところ、たまたま通りすがった顧客が映画監督。やがて2001年の9.11事件をきっかけに監督=リンダさんの家に同居生活をするうちに、市民権の復帰の事実を知りそれによって米国民としての福祉サービスを受けられるようになったことで安住の場所を得て、生き別れになっていた親戚とも再会を果たす、と文字で書いている分にはツトム・ジミー・ミリキタニさんの人生はあまりに数奇かつ劇的&とんとんと話が進みすぎるようにみえないこともありません。
 でもジミーさんのお話はもしかしてできすぎに見えるかも知れないけれど、なによりもこの作品がいいな、と思えるのは人と人とのつながりをしっかり感じられるところ。身近な国だと思っていてもまだまだ知らないことがたくさんあるアメリカと日本。そんな中で個人のレベルで相手を思いやって何かしてあげたい、どうしてなのか知りたいと思う心には国籍・人種の差も、男女やら年齢の差もなくて気持ちがあれば十分お互いを信じたり通じるものがあるんだなということを十分に感じさせてくれるから。今の世知辛い世の中でそういう行為を単純に信じたいというのもあるかもしれないけれど。
 カメラを持っていた監督=リンダさんに自分のことを撮ってくれと頼んだ時には、もしかしてジミーさんの心には最期の一旗あげてやる的小さな野心の炎がなかったわけではないのかもしれません。それまで誰の世話にもならない、アメリカで生まれ、日本に渡ったあとに夢を抱いて戻ってきた母国アメリカから裏切り同然、というより裏切りそのものの仕打ちを受けてずっと心に怒りを抱いてきたジミーさん。過去の傷口に触れられると相手構わず激していた彼が9.11の事件をきっかけにおそらく甦った過去の記憶と、並行するように進められたリンダさんの懸命のフォローでちょっと開きかけた心がリンダさんだけでなく地域活動を通じて周囲の人々にも開かれて行く様子はやっぱ人って温かいものなんだなと思えます。

 あとその膨大に撮り貯めた日々の様子のなかからこれだけの尺にまとめた編集がなによりも秀逸。公園に植えてある草を引っこ抜いてる後ろの方でどこからか見てるのか子どもがプップーと警告音(!)を発してるところやら、夜遅くに帰ってきたリンダさんに心配してるんだか構ってほしいのかお説教やらご飯の支度をブースカこぼしまくるジミーさんのうしろで、ニャンコのスティンキーがたぶんジミーさんと全く同じようにニャーニャー鳴きまくってるところとかちょっとしたユーモア溢れる場面にクスクス笑い、明るい光の差し込むリンダさんの部屋で同じようにまどろんでるジミーさんとスティンキーの連続カットに思わずジンワリ。
 あとはお姉さんとの再会場面もこれ見よがしにおいしいところに持ってくるのではなくエンドクレジットでさらりと様子を見せてくれた場面もかえって効果的でした。もちろんこの物語はジミーさんと家族、に重点が置かれているのではなくて彼自身の心の旅というか自らの中の決着というか踏ん切りがテーマだと思うので、ご家族との再会はあとからついてきたものとは思いますけれども。
見終わったあとには人と、うちのネコにめいっぱい優しくしたくなった作品でした。

 と、初めて観てから1年半近く経ってもう一度観ても同じようにほんのりあったか気分で劇場をあとにしました。全く関係ないところでひとつだけ言うなら、わたしが再見したのは公開終了間際だったためにデジベで上映していたのですけれど、プリントでの上映が観たかったです、はい。


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去年のTIFF初上映決定時より個人的にひそかに応援してきた『ミリキタニの猫』ですが、いよいよ9月8日より公開!
ということで、それに先駆けてジミーおじいちゃんの画文集が今月30日より販売されるそうです。著者/編者は映画のプロデューサーのマサくん。書店で見かけたらぜひぜひお手にとってご覧になってみて下さいー
ピース・キャッツ 「ミリキタニの猫」画文集

なお今年70年ぶりに来日したジミーさんの様子を伝えた公式サイトはこちら

mirikibanner

13:58 | 「ま」行 | edit | page top↑

『GOAL!2』

GOAL!2 STEP2 ヨーロッパ・チャンピオンへの挑戦 スタンダード・エディション

 えと、半ば義務感、お付き合い、腐れ縁(違っ)のようなものでみてしまったんですが、予想以上にひっでー出来ばえでした。今期はリーグの首位らへんかもしれないけども、「銀河系軍団」期からしてみれば製作・公開のタイミングからしてめっちゃ今さら感漂う舞台設定ゆえにトホホ感が漂うことは百も承知でしたがそれにしたってトホホノホ。レアルのスタメンなんて主要な芝居にほとんどからんでない、いっしょに風呂入ってるだけとか添え物ですよ、ほとんど。前回は一言二言のセリフのあったラウル、ジダン、ベッカムさえセリフなかったような。どういうこと?まだニューカッスルのほうが協力的だったんじゃないかってきもしますが、それにしたってムネスのレアル移籍がオーウェンとの交換トレードってなんか失礼しちゃわないかー。とそれだけでムっ。そういえばこれのイギリスプレミアかなんかでオーウェンが観に来てた写真をどこかで見たような記憶が。こんなので、いいのかー!!

 しかしなによりだめだこりゃと思ったのはムネスとガバンが一体何のためにプレイしてるのかまったくわからんところ。ビッグクラブに参加すること=芸能人張りの派手な私生活やら恋人の悶着やら家族やらのプライベートにポイント置くばっかりで、ビッグなチームに入って浮かれてるだけというか。カバンにいたっちゃ「しわ」が心配ってなんのこっちゃって感じ。彼らがトップ選手の中に身を置くことによって生じるプロアスリートとしての局面みたいなものにはこれっぽっちもお話がいってないんだもの、ちょっとそれはサッカー選手に対してあまりに失礼な描き方ではないのかなあ。かりにもFIFA公認映画ですぜ。観にいった客層に総すかん食らってもこれではしょうがありません。興行的にもほとんどウワサは聞かなかったのも納得というか、3部作の一番最後って劇場公開されるのでしょうかねえ。しかも舞台はW杯ドイツ大会のはずでしょ?…2010年の南アフリカ大会の時期までひっぱるのかなあ。つらいねえ。

あ、いきなりルトガー・ハウアーおじさんが監督でびっくらしました。
以上。
03:33 | 「か」行 | edit | page top↑