『ロング・グッドバイ』

またも雑談シリーズですが
いい加減ここも年明けの記事を書かないとホントに旧正月も越えそうなので、もう2007年には別れを告げようと思います。でも去年みた中で新旧併せてこれはやられたーという5本に絶対入ってしまうのがこれですー。

LGB

原題:THE LONG GOODBYE  監督:ロバート・アルトマン  1973製作
出演:エリオット・グールド、ニーナ・ヴァン・パラント、スターリング・ヘイドン
PFF2007 はじめまして、アルトマン(2007.7.14〜8.10)
ユナイテッド・アーティスツの栄光(2007.8.18〜9.7 @シネマヴェーラ)上映作品

 みた直後にbeckanのほうに書いた中身とダブっちゃうんですけども、去年は村上さん新訳発刊という大きな話題もあった(…とはいえ書籍タイトルは『長いお別れ』のほうがぜんぜんステキだと思いますけど)『ロング・グッドバイ』。これは長いこと食わず嫌いだったといってよいです。ってなぜかと言えばエリオット・グールドのフィリップ・マーロウ像というのが(ビデオパッケージの写真からして)あまりに原作イメージとかけ離れてるというのがありまして見る気が起きなかったんですね。それほどチャンドラーのマーロウ・シリーズをちゃ−んと隅々読みつくしているわけではありませんが、やっぱりマーロウといえばソフト帽にギムレットのイメージ。だから当然のようにボギーだったり、まだ『さらば、愛しき女よ』でマーロウ役だったロバート・ミッチャムのようにシネマ/ムービーよりも“銀幕/キネマ”系の雰囲気と決め込んでたわけです。
 グールドのマーロウときたらひっきりなしに煙草をくわえちゃ片手にはバドワイザー、着てるものもクシャクシャだし、行方知れずの著名作家の夫を探してくれと依頼してくる美人妻やら、妻を殺して失踪した友人の男やら、はたまたその友人が持ち逃げした金の都合をつけろと言い寄ってくる凶暴なヤクザ連にいいように翻弄され、原作に漂う“クラス”からはほど遠い限りなくほにゃれれなC調マーロウ。
 でも、これがストーリーの持つハードボイルドな色合いを70年代風に際だたせていてすごくよかった。劇中何度も繰り返される幾通りもアレンジ変えた『ロング・グッバイ』のメインテーマ曲に、そしてあのラスト! 既にその時点でほにゃれれぷりがめちゃセクスィーに見えてきているグールド=マーロウが一転するその瞬間とその後に漂うドライなむなしさがすんばらしい。

 それになにより冒頭の猫場面がめっちゃすんばらしい!!! ここの冒頭部分のエピソードは映画オリジナルの挿入場面なので原作好きの方からはいろいろいろいろ言われてるそうですが、ワタシが猫好きなのはおいといたにしても、大人の男の人ならはぜーったいニヤニヤしながらみちゃうだろうなあとか思ったりする。そう、女もニャンコも気まぐれなの。小細工でごまかそうったって無駄なこと。気に入らなきゃすいーっとそ知らぬ顔して目の前から消えてみせるのよ。だけどメキシコから彼がよれよれになって帰ってきた時にゃどこからともなく現れて、家の前で何もなかったような顔をしてにゃ〜んと待っているんじゃなかろうか。そしてへろへろな男は再びスーパーにネコ缶を買いに走るのさ。んー、ハードボイルド(?か?)。
 ちなみにチャンドラーは愛猫家として有名。チャンドラーの著書を多く翻訳された字幕翻訳家の御大・清水俊二さんも愛猫家でした。ビバ、猫仲間!

というわけで、今度の2・22というニャンコの日に再発されるDVDは絶対買おうと心に決めてます。素晴らしき新ジャケ!

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『パンズ・ラビリンス』

Pan's Labyrinth

原題:EL LABERINTO DEL FAUNO(PAN'S LABYRINTH)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ

  アカデミー賞発表時やらいくつかの抜粋場面を見たり限りではダークな純ファンタジーなのかと思っていたけれど、実際に鑑賞したらファンタジーには違いないのだけれど予想外にスペイン内戦史が背景におかれたしっかりした物語でした。暗い世の中でも生まれてくる弟のために懸命にがんばるオフェリアの姿が愛おしいです。
 物語に引き込まれるには痛々しい感情が伴わないでもないのだけれど、それが本来のファンタジーの持つシュールさかつ寓話的な一面なのかなと思ったり。近現代史に限らず体制の恐怖が身近なところに蔓延っていた時代には、想像の力を羽ばたかせることで安らぎや希望を託す人々も老若男女問わず多かったことでしょうね。今の時代にも地球のどこかにはそんな安堵の地を求め想いを抱きしめよりどころにしている人々もいるのだろうと思うけれど。

@Q-AXシネマ
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『眠れる美女』

眠れる美女

原題:Das Haus der SchlafendenSchoenen(a house of the Sleeping Beauties)
監督:ヴァディム・グロウナ  2005年製作
出演:ヴァディム・グロウナ、マクシミリアン・シェル、アンゲラ・ヴィンクラー、ビロル・ユーネル

 夫婦の間に不和を抱えていて、妻が娘を連れて故意なのか自動車事故を起こして死亡。以来絶望と苦悩の中にひとり取り残されて年月を重ねてきた男は親友にとある館を紹介される。女主人が切り盛りするその館では全裸で昏々と眠り続ける少女たちが客と一夜を共にする。娘が生きていれば同じぐらいの年頃だろうと戸惑いながらも次第に取り付かれたように館に通うようになる男だったが…

 とある街中の館の一室に一糸まとわぬ姿で眠りに落ちている美少女に寄り添う老齢の男。「たちの悪いいたずらはなさらないでくださいませ云々」のコピーも淫靡というかデカタンなかほりが魅惑的だった本作は川端康成の小説を映画化した官能ミステリー。
 川端だったか谷崎だったか失念しましたが数年前にもスペイン映画で同じような年代の官能系小説の映画化作品がありましたし、ここ最近で思い当たるのは『薬指の標本』あたりとか? そういった日本の小説をうまく欧州風なアレンジで映画化しているケースは意外とありそう。孤独や老いといった苦悩を抱えながらも若い肉体、存在に焦がれていくという流れだと日本ベースものじゃないけど『ベニスに死す』なんかにも通じそう。
 監督と主演をつとめたV・グロウナの作品への思い入れは強いのかと思うけれどそういう作品って往々にして観客置き去りひた走り路線になりがちに感じるのですが(ましてこういう内容だし)、その感覚も苦にならず夢でまどろんでいるような。…ホントにまどろんでたのかもって!? 脇を固めた女将役のA・ヴィンクラーに親友役M・シェルの只者ならぬ雰囲気が効果的&今回はいつもと違ったこざっぱりぶり(!)にどこか狂言回しのような佇まいのユーネルにーさんも○。M・シェル扮する親友の部屋から見える浮世離れした窓の外の風景もシュールなグレイの空が印象的。印象派は好きです。

@ユーロスペース

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『ダーウィン・アワード』

ダーウィン・アワード

原題:THE DARWIN AWARDS  監督:フィン・テイラー  2006製作
出演:ジョセフ・ファインズ、ウィノナ・ライダー

ダーウィン賞というのはamazonの解説によれば

>トンデモなく愚かな方法で、自分という存在を人類の“遺伝子プール”から抹消した人間に対し、「バカな遺伝子を減らし、人類という“種”の存続の可能性を高めた功績」を讃えて授与される、実在する賞


というもともとはWEBサイトでポピュラーになり、その後書籍になったりしてそういや本屋さんでカバー並んでるのみたことあるなーと思ったり。
元のサイトはこちら→ http://www.darwinawards.com/

 映画の方は、ダーウィン賞並みの愚かな死に方(生きてる人もいたけど)をした人物に対して保険金を払うか否かの調査員、J・ファインズ扮するバロウズとそのチームを組む先輩調査員(W・ライダー)の全米行脚のロードムービー。ダーウィン賞は少なくともバカな死に方するほどおバカな遺伝子を人類に残さなかった功績を称える賞ですが、この人たちはそんな人物に保険金を払ってやる価値があるか、死に至る過程を見極める役割なので表裏一体というか正反対というか。実はバロウズというのが元は切れ者捜査官だったのに血を見るのが大の苦手で、そのために検挙寸前の連即殺人事件の容疑者を取り逃がして警察に辞表を提出した過去があり、そんな彼が事故調査員に転職、かつそんな警察時代から彼の活躍ぶりをリアリティTVのように一人のカメラマンがくっついてまわっているということで様々珍道中にはなるんですけども、やがては再び殺人犯を追いつめるというサスペンスな要素も盛り込まれており、決して広く宣伝されているようなおバカ一辺倒の作品ではありません。ってか公式サイトを見に行ってもバカ丸出しなことしか書かれておらず非常に不満。売り方難しい映画かも知れないけど、お客に誤解を与えるんじゃないでしょうかねー。
 とはいえ作品の方もそんなダーウィン賞ネタやら、謎解きサスペンス、はたまたそういや「バロウズ」って名前からしてピンと来るべきなのかも知れないけれど、犯人の残した謎のメッセージやらローレンス・ファーレンゲティ御大ご本人の登場するビートネタといい、いろんなものがぎゅーぎゅーに詰め込まれている状態なのでジャンルわけは微妙だと思うんですが、ブラックユーモアたっぷりの、サスペンスコメディと思ってみたほうが楽しめると思います。
出てる役者もジョセフ、ウイノナほかデヴィッド・アークエット、ジュリエット・ルイス、ティム・ブレイク・ネルソン、ルーカス・ハース、クリス・ペンと微妙に豪華。
個人的に一番受けたダーウィン・ネタはやっぱしメタリカのライブでしたけども、バカ映画とはまた違った楽しみがありました。結構好き。

@シネセゾン渋谷
00:17 | 「た」行 | edit | page top↑

『ゾディアック』

ゾディアック 特別版

 60年代後半から70年代初頭にかけて全米を震撼させた連続殺人事件を基にしたスリラー。公開当時にさまざまな賛否を聞いていたのでどうかと思っていたけれど個人的にはかなりおもしろかったです。終わった後にはDVDの特典映像でこまかいフォローができたのもよかったかもしれないけれど、長丁場を一気に集中して見られました。
 元がほとんど迷宮入りしている未解決事件であるからその結末をどう持ってくるかというのはまた例によってきわめてフィンチャー作品らしく後味はよくないんだろうなとは思っていたけれど、主人公の一人として登場するグレイスミス氏の原作に基づくのであろう緻密な当時の事件再現模様や捜査の現場に流れる閉塞感にじっとりとイヤな汗を握り、また得体の知れない暗号文を送りつけ自らを「ゾディアック」と名乗る犯人を追いかけることに憑かれそれと引き換えにそれぞれの立場を失ったり代償を払うことになる担当捜査官、そして新聞社の男たちのドラマにがっつり見入ってしまいました。
 主要な3人はじめ登場人物は犯人と目されていた人物含めてみな怖かったり味があったり作品に即したいい芝居をしていたと思うけれど、ロバート・ダウニーJr.ってやっぱりうめーなーと思いました。…今回、半ば地ですかね。
 しかし『ダーティハリー』がこの事件を元にしてつくられて、なおかつ公開の際には自己顕示欲の強い犯人を捕まえようと警察が画策して待機してたという余談は知りませんでした。映画みたいな本当の話。今の時代だって犯罪はばんばん起こっているし怖ろしいこともたくさんあるけれど、なんとなくその時代の混沌とした闇のようなものに背筋が寒くなったり。
01:12 | 「さ」行 | edit | page top↑

『俺たちフィギュアスケーター』

Blades of Glory (Full Screen Edition)

んふっふ、ついにニッポン公開を迎えた本作。お客さんも結構入ってましたぞ。
ワタクシの目にくるいはなかったのよーっ。ホーッホッホッホ…

ってのはおいといて、半年以上分の期待に胸をふくらませてとっとと見てきた本作ですが、やー期待通りのバカ映画でした♪ さすがMTV制作。ストーリーの詳細はいちいち説明するのもめんどーなので割愛。とりあえずウィル・フェレルのすげー腹ほかマジなスケートなんぞ忘れてありえないバカっぷりを楽しんだもの勝ちです。しかしこのようなバカ映画にちゃんと元or現役プロ・スケーターの面々がちゃんと協力しているところにアメリカのスケート協会の懐の深さを感じたり(…ホントか)。佐藤由香さんや伊奈京子さんの顔も見えたほか、サーシャ・コーエンまで?って彼女はプロに転向したのか?? 女優志望だったはずのナンシーも出てきたことだしこれでトーニャ・ハーディングでも出てきたらすごいなーと思ったけど、そこまで悪乗りはしてなかったですね。ま、お話自体がじゅーぶん悪乗りはしてたんでどうこうは言いませんけども。面白かったでーす。満足。まんせー

以上
21:08 | 「あ」行 | edit | page top↑

『風の丘を越えて』『千年鶴』

senen 風の丘を越えて

 夏ごろから観たいなあと思っていたイム・グォンテク監督の新作『千年鶴』を韓国映画ショーケース2007で観て、その後に未見だった『風の丘を越えて〜西便制』を後からようやく観ました。

 『千年鶴』は『風の〜』の続編とちらりと聞いていたのですけれど、パンソリの歌い手に育てられた親の違う姉と弟という同じ題材設定をモチーフにした別物と考えたほうがよいのかと。本国では前作ほど興行的に振るわなかったということですが、別れと再会を繰り返す姉弟にもうちょっとすっきりしてもよいのではと思いつつも、パンソリの響きに感動。土地の有力者に愛人として囲われていた姉娘がその老人の臨終の床に呼ばれて「お前の歌を聴きながら逝きたい」と所望され桜の花びらが舞う背景を景色に歌う場面には月並みな言葉しか出てこないのだけれど心を奪われてしまいました。でももしかしたら『風の〜』を観ていなかったことも、自分にはちょっとプラスに働いたかもしれない。

 そのあとにDVDで鑑賞した『風の丘を越えて』のほうはこれは劇場で観たかったなあと後悔。お話の流れが『千年鶴』よりすっきり感があったので歌の道が研ぎ澄まされていた気がします。この作品に盛り込みたかったエピソードを付け足したり、また別伝みたいな形で鶴の形をした山の見える海辺のエピソードとか付け加えた構想が『千年鶴』の元になったのかしら。

『風の〜』は娘と父親、『千年鶴』では姉と弟といった関係に焦点が合わされていた違いもあるかもしれない。2作品とも姉娘は歌の才能を伸ばすため、その歌声に「恨」をこめるために師匠である父親によって盲目にされてしまうのだけれど、どちらも父親の身勝手とはいえ『千年鶴』ではその辺のくだりの描き方に深みがもうちょっとあればいいのになと正直思ったのでしたが、『風の〜』ほうで父親が最期に「恨」を超えた歌を目指しなさいと言葉をかける場面に感銘を受けました。自分のなかでは韓国語の「恨・ハン」というとひたすらどろどろしたイメージを抱いていたのだけれど、もしかして原語の意味するところのそれは、日本語とイコールではなくてもっともっと深い意味があるのかなと思ったり。ご専門の方に聞いてみたくなりました。

弟役の俳優さんは弟キム・ギュチル→チョ・ジェヒション、父親キム・ミョンゴン→イム・ジンテクとなっていますが、両作のお姉さんはオ・ジョンヘで彼女の歌がとにかく絶品です。パンソリって日本の歌で言ったら民謡というより浪曲のスタイルに近いのかしらと思ったりするのですが、そのSoulfulなところに素直に感動したのでした。
01:05 | 「か」行 | edit | page top↑

『デジャブ』

デジャヴ

 出てる役者さんも好きな人が多かったし、最初のほうのほとんどセリフなしで進んでいくテロ場面とかも緊迫感あったし、結構おもしろかったと思うんですが、これって「デジャヴ」といえるのだろうかーと素朴な疑問がわきました。タイムマシンではないのか? いやあの、女性の部屋からデンゼルの指紋がべたべたでてきたならあの血痕だって彼のものとか調べがつかないものなのかなあとかも思ったりしたんですが。あんなにハイテクな機械使ってるのに。
 それにしたってわたしのヴァルの実のつまりようは役作りだよね。。だってさー素でいったらジム・カヴィーゼルのほうの役だって結構さまになるはずだもんー。そればっか気になって夜も眠れまへん。近況求むって感じです。ハイ
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『トランシルヴァニア』

Transylvania
原題:Transylvania  監督:トニー・ガトリフ  2006年製作
出演:アーシア・アルジェント、ビロル・ユーネル、アミラ・カサール
   
 自分の元を去った男を追いかけてトランシルヴァニアにやってきたジンガリーナ。酒場で出会ったチャンガロに「君みたいなべっぴんがこんなところに何しに来た?」と尋ねられ「愛を探しにやってきた」と応えるジンガリーナには大胆不敵な自信さえ感じられる。愛する男の子を宿しているのも当然強くなれる要因のひとつだろうけれど、誰かに恋して愛して夢中になっている時のエネルギーとはすごいものがあって、それだけで人を突き動かせるものだったりするから。だけどそれが現実のものにならなかった時のダメージは、だからこそ一層激しい傷痕になる。どんなに叫んでも吐き出せなくてどんなに理解してくれる人が側にいてもなかなか傷をさらす気にも癒してもらう気にもなれなくてあっちこっちにぶつかって痛い思いして、叫んで涙こぼして迷いながら自分で対処する道を選ぶしかない。
 チャンガロは異境で自分一人で生きてくためのしたたかさみたいなものを身につけてたはずの男。再会したジンガリーナの傷ついた姿を見て「おいおい愛を探しに来たんじゃなかったのかい、Look at you!」とばかりに大笑いするような失礼な、でもどこか達見してるような、悪気のないぬくさを感じさせる男。
 彼と一緒にデヘヘと笑ってみたところからジンガリーナの再生は始まり、チャンガロのほうも自分以外の誰かと生きて構う生活が始まる。だけどジンガリーナが出産の時を迎えて彼の方はアイデンティティの喪失というかどうしたらいいかわからなくなる。戸惑いの逆転。そこでまたジンガリーナの元からフラフラと離れていってしまうナイーブな彼。自分を鼓舞するかのようにジプシー楽団に酒を振る舞いながらビール瓶で傷つけるような自暴自棄な行為に出てしまうけれど音楽ってそういうものじゃないんだよ、とセリフを残していく楽団のおじちゃんの言葉が沁みる。それはお皿を床に叩きつけてたジンガリーナの行為も半分一緒なんだろうけれど、お祝いの席でグラスやら割る習わしとは決して苦しみを紛らわせるものじゃないのだろうし。苦しんで迷ってようやく再びの再会を果たす二人と赤ん坊にどんな生活が待っているかは分からないけれど、楽団の音楽に合わせて幸あれと祈りたいラストシーンでした。
 ロマの音楽は人生の酸いも甘いもかみ分けた上での大団円的躍動力を感じさせるから余計に人の心を打つものがあるんでしょうね。正直音楽だけで見せられてしまうもの。ずるいぞ。
とはいえエキゾチックなダイナミックさの中に繊細さを感じさせるアーシア・アルジェントの芝居も好感が持てたし、ユーネルおじさんの片手でタマネギぶっつぶしの男の手料理をわたしも食べたいなあと思いました。火はちゃんと通した方がよさそうに見えたけど。
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『インランド・エンパイア』

David Lynch's Inland Empire (Limited Edition Two-Disc Set)

原題:Inland Empire  監督:デヴィッド・リンチ 2006年製作
出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ジャスティン・セロー

 とある新作映画の主演の座をオーディションで得た女優の身に劇中劇とも現実ともつかないシンクロして降りかかる境のない悪夢のような出来事。

 リンチは『マルホランド・ドライブ』や『ロスト・ハイウェイ』というおそらくこれと比較の対象になりそうなここのところの、といっても結構な年月は経ってるけども話題作を見てないのでなんですが、それをのぞいても十分にリンチ!&(「オ」がついてもよさそうですが)カルトしてました。出だしの蓄音機?の針みたいなものぐぉんぐぉん回ってるところからクレジットの歌まで(…とはいえ、あの曲なんだっけーほかの作品でもみたことあったよなーなんだっけなんだっけーともうかゆくてかゆくてしかたありません。誰か助けてー)赤いベルベットの幕の裏に広がる底なし沼の冥界妖怪悪夢的不条理不可解な迷路を手探りでもそもそ歩く気持ち悪さに妙な快感。リンチもわたしもフェチだ。

 あとは本作でプロデューサーにもクレジットされてたローラ・ダーーーンがまた集大成。『ブルー・ベルベット』で出てきた時からリンチ映画含めて何作観ているか分かりませんが、本作では品のよろしいマダム風からどブスまで、すっぴん顔含めて大熱演。なんてったってあの「∞」形状の口は昔から彼女最大の武器だよなーと改めて思った次第。昔はそのルックスからしてなんじゃらほい的女優さんでそんなに好きじゃなかったんですが、近年はなかなか○。

 おねーちゃんの群舞っていっても並んで踊ってるだけですがあの場面はオゾンのあれ、とかハル・ハートリーのあれを思い出したり。
思い出したっ!!ラストのクレジットの曲はクリアレーゼの『新世界』で使ってました!!! 
あーすっきりした。再び快感。

@三軒茶屋シネマ
11:02 | 「あ」行 | edit | page top↑