『FCヴィーナス』

fcvenu
 去年のドイツ映画祭で上映になった夫婦サッカー対決もの。以前にご紹介したとおり大元はフィンランド映画でそっちはすでにレンタルも出てます。
 熱烈サッカー狂の夫、といってもフーリガンじゃないんですが家庭を顧みずにサッカー一辺倒の生活を続ける夫に妻たちが勝負を挑むというスポ根コメディ。奥さんチームに入れるのは妻に限らず恋人や肉体関係を持でばいいってことでゲイの恋人やら、女子サッカーの名選手を女好きの選手にナンパさせてそういうふうにもってこようとお膳立てするあたりが展開がまたすごいというかすすんでんなーと思ったり。そのほかことの中心になる一組の夫婦にはそれぞれ秘密にしてることがあって夫婦関係の修復やら父娘関係の修復やら根性もの一辺倒ではない人間ドラマもある程度は展開されます。でも、基本はコメディなので。しかしかみさんの機嫌ととろうと自分の体にスシもりつけてベッドで待ってるダンナにゃあきれました。まずそー。食べ物を粗末に扱っちゃいかんぜよ。
10:42 | O.T.ドイツ映画 | edit | page top↑

『エレクション』

エレクション~黒社会~

 香港のヤクザさんは2年ごとに選挙で組長を決めるのかーなんて律儀な、と思ったらこの由緒正しき組だからなんでしょうね。無口で地道なロクさんと見た目からしてぶちぎれのディーさんの間での選挙投票はやっぱ無難なところでロクさんに落ち着きますが、そんなの許せるわけのないディーさん。中国本土に隠された会長の証、龍頭棍入手をめぐってやりあう二人にイケ面組員ジミーさんが絡みますます混乱の様相。そしてひとまずディーさんには2年後の会長の座と新たなシマの収益山分けの約束を取り付けたロクさんが組長に落ち着き、二人は争いを水に流すべく手に手を取り合うものの、の、の…チャララー…(仁義なき〜のテーマね)。
 でもやっぱりこれはあくまでもこの組のクロニクルということで、ちゃんとこの後がある前提で作られてるのでそれがないと楽しみ半減、てかまず完結しません。フィルメックスでの上映ではちゃんと2本上映されましたけど、公開時にあまり興行成績的が芳しくなかったのかその後の『2』の公開は一向にウワサを聞こえてきません。でも、このままではやっぱり居心地が悪い人が多いと思うのでぜひともビデオでもいいから続きを見せてほしいものです。
10:05 | 「あ」行 | edit | page top↑

『ヒトラーの贋札』

faelscher

原題:Die Fälscher (英題:The Counterfeiter)  
監督:ステファン・ルツォヴィッキー 2007年製作
出演:カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ

昨年に引き続き祝ドイツ語圏勢オスカー外国語映画賞受賞ー。

 第二次大戦下、偽札作りのプロの腕前を買われユダヤ人強制収容所で大がかりな偽札偽造プロジェクトの陣頭指揮にあたった詐欺師の物語。偽札の緊急必需に戦況がドイツの形勢不利であることを感じとり作業を遅らせては戦争の早期終結に荷担を試みるも、それによって仲間たちの命を危険にさらすことになるという葛藤。ホロコーストもののヘヴィーな一面にもかかわらず語り口がそれ一辺倒だけにならないある程度の軽さも持ち合わせていたとは思うけれど、終戦間際に健康を害して始末されたり、せっかく終戦まで生き延びたのに報復を恐れて自ら命を絶つ仲間のエピソードはやっぱり心が痛みました。どう描かれようとも心に残る鉛のように重い事実。
 収容所に入れられるまではおそらく偽札作りの才能で他方と取り引きしながら自分一人生き延びるための世渡りをしてきた男サリーが収容所で仲間たちの命を背負うことに直面し、出会った反政府の立場を貫く印刷工ブルガーに知らずのうちに感化されつつも、皆のためにたちまわるようになっていく。
 終戦後、自由の身になってモンテカルロを訪れたサリーが手にしていたのはまた一旗揚げようと作った偽札だったのかも知れないけれど、そうしてギャンブルで多額の現ナマを儲けていく中で、よみがえる思い出の中にそれ以上に価値のあるものを自分が手にしてるのだと自覚していくくだり。生きていることの尊さのようのものが伝わってくる、海辺の後ろ姿にいつまでも目を留めてしまった。
 実は劇場で観る前に、公開になることを知らなくてamazonでDVDを買ってしまってたんですね、これ。その時にひかれたのがジャケットになってる主人公の後ろ姿。本編を見てより想いが深まった次第です。通してみれば比較的オーソドックスにまとまって奇をてらったところがないといえばそうかもしれないけれど余韻の残った作品でした。

 とはいえなんで同作に注目していたかと言えばアウグスト・ディール禁断症状ゆえだったんですが(…だって公開もしてくれないし、ドイツ映画祭でもやってくれなかったんだもの。ッキーッ!)、今回は主役じゃないのね、と思っていたら原作者こと印刷工ブルガーというしっかりおいしい役どころ(…不謹慎ですんません)。満足。主人公に目をかける収容所のお偉いさんの彼は『イェラ』の彼。

The Counterfeiters [2007]

@シャンテシネ
10:41 | 「は」行 | edit | page top↑

『サラエボの花』

grbavica

原題:Grbavica  監督:ヤスミラ・ジュバニッチ  2006年製作 サラエボの花
出演:ミリャナ・カラノヴィッチ、ルナ・ミヨヴィッチ、レオン・ルチェフ、ケナン・チャティチ

 2006年のベルリン映画祭金熊賞受賞作品。原題の「グルバヴィツァ」は物語の舞台となるボスニアヘルツェゴビナの首都サラエボ市の地区の名前。サッカー監督のオシムさんの出身地ということもあって劇場ロビーや公式サイトにメッセージが寄せられておりました。
 映画はそこで起きた紛争というか普通の市民にまで及んだ辛い体験によるPTSDは描かれているものの他者を糾弾したり、なにかをこれ見よがしに投げかけるような意図は感じませんでした。でも男の人と女の人では抱く感想というか着眼点も違うかもしれないとも思ったり。
 過去の怖ろしい体験から抜け出せない母親、授かった方法があまりにあんまりとはいえ愛しい娘。でも娘のほうは母親の事情に構わずになにやら隠し事があるらしいとふつふつ湧き上がる不安ゆえの不信感を募らせては反抗的な態度に出て。その辺をわかってみてるこちらはどっちの立場も辛い。
 それまで寡黙を貫いてた母親が娘に過去を吐き出し、セラピーでこぼれるように本音を語る場面も言葉を失うけれど、それ以上に娘が髪の毛を刈る場面。自分と父親の似ているところはどこか?と尋ねたときに母親が「髪の毛」と応えたそれを真相が分かった後に自らでそってしまうところに嗚呼と思ってしまった。娘が真実を知ったことによって、二人の間にはきっとこの先もなにかしらの問題も起こりうるだろうけれど、でもそれを好転させようとおもんばかる気持ちも生まれるはず。みんなみんな幸せになれるといいね、本当に。
 たぶんあちらの民族的な意識のようなものは当事者以外、まして日本人の我々には到底理解できないものがあると思うのだけれど、普遍的な母親の想いを演じきったM・カラノヴィッチには惜しみない賞賛を送りたいです。

@岩波ホール
11:49 | 「さ」行 | edit | page top↑

『ブラックスネーク・モーン』

ブラック・スネーク・モーン スペシャル・コレクターズ・エディション
 これはポスターやら事前のイメージから受けたのと印象まったく違った作品でした。もっとロドリゲス&タラ系バイオレンスなのかと思ったけれど純な音楽もの…とも違うか、、でびっくり。ってかひじょうにおもしろかったです。サミュエル・L・ジャクソンがいつぶちきれるのかとビクビクしないでもなかったんですが、すねに傷持つ老ブルースシンガーとして、クリスティーナ・リッチ扮する心の弱さから体でサミシさ紛らわせてる娘を根気強く更生の道へと導こうとするけなげさに徹していたのも新鮮でした。ふけメイクもあるけどこういう役どころってひと昔前ならダニー・グローバーとかやってそうな感じ。今回プロデューサーのほうに回ってるジョン・シングルトンとサムってたしか『シャフト』の撮影で大喧嘩したウワサも伝わってきていましたが、いい雰囲気的に関係修復できてるのかなと思ったり。いかにもハリウッド・メジャーメジャーしていない小ぢんまりした、いい意味でロドリゲス&タラ系というか“思わせぶり”な台詞回しや映像が好みでした。
 クリスティーナはめちゃかわいかったですね!こんなにかわいく撮れてるのもびっくりといっちゃ失礼かもしれないけど今まで観たのとちと雰囲気も違ってたし。ブロンドのせいもあるのかしらん。あといきなりしょっぱなから体当たりだった彼女の恋人役のジャスティンにゃこれまたびっくり。この人、本気で映画進出しようとしてるんでしょうか?むーーーん。

@DVD鑑賞
10:38 | 「は」行 | edit | page top↑

『長江哀歌』

長江哀歌 (ちょうこうエレジー)
 三峡ダムの施工工事に伴いダムの底に沈みゆく土地へ生き別れになった妻と娘を捜しに帰ってきた男、また出稼ぎにやってきた夫に会うため訪ねてきた妻の2つの物語が進行する。二人の一見似通った人捜しは交差することなく静かに平行してそれぞれの結果を迎える。
 別に大きなどんでん返しの展開が起こるわけでもなく、感情の起伏がくっきりはっきり描かれているわけではないのだけれど、だからこそ残る味わい深いもの。佇まいが以前のホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンやさらには小津路線を思い起こさせるのだけれど、風景的なだけではなくて、ときおりビビッドに挿入される生々しさとでもいうか、息吹が手に取られるように感じられるのがよいのかも。
 この作品の中の映画っぽい展開というか、チョウ・ユンファ好きのヤクザなあんちゃんとおじさんのエピソードは好きだったな。あの携帯の着メロ、『細い目』でオーキットのママとお手伝いさんが歌ってたアレですよね。
 ジャ・ジャンクーの作品は去年ドキュメンタリーの『無用』が、初めてちゃんと観た作品でフィーチャー作品は初めてでしたけど、雰囲気・空気はただならぬ伝わってくるものがあったというか。自然なまんまなんだけど時々あえて遊んでいるのかなんなのか人目をひく不思議なものが挿入されているのはおもしろいですね。でもキネ旬で年間1位の作品になったのは結構驚きではありました。

@盛岡・ルミエール
23:50 | 「た」行 | edit | page top↑

『ダフト・パンク エレクトロマ』

ダフト・パンク エレクトロマ
 劇場予告があまりにかっこよかったので期待も大きく劇場で観たかったんですが鑑賞しそびれてた作品。割とウェブを探索するとなんじゃこりゃ風の感想も見かけますが、いかにもミュージックビデオといえばそうなので仕方ないかもと思ったり。個人的には嫌いではないんですけどけどけど…ねえ。
 出だしから荒涼としたハイウェイ1本道をガーっと駆け抜けていってどこかいかにもサバーブな居住区にゆったり入っていく車。研究室にたどり着いてぬりぬり手前までの音と画像だけで○。
 あの二人のロボットさんは人間になりたかった、というより他人と違うことがしたかったのかしらと思ってたんですが、その夢が破れて行く展開は普通の作品と大差ないのかも知れないけれど、外見がすっかり元に戻ったまま延々と歩き続けていく女体の森じゃなくて砂漠の風景がきれいだった。爆発するほどの絶望感はそこまでしなくても…と思ったけれど、残った一人が後も追えずに火のついたままそれでも延々と歩いていく姿がなんとも。
出だしの爽快感からあまりにトーンが変わったしまってやや失速ぎみだったのはショボンでした。
14:00 | 「た」行 | edit | page top↑

『夜顔』

Belle Toujours (Non-US Format, PAL Region 2)

原題:Belle Toujours 監督:マノエル・ド・オリヴェイラ 2007年製作 夜顔
出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジェ、
 ブニュエルの『昼顔』の続編、ということでしたけれど(…といいつつ観てないんですが『昼顔』)これ1本でも大人の芳醇な香りを楽しめる一作。
 音信不通だった友人の妻の姿を偶然見かけて以来、連れない態度にプチじりじりするもそれを上回る再会の奇妙な喜びに浸って半ば浮かれているようにも見える老齢の男が追いかける鼻先で、かつて二人の間にあった関係の後ろめたさか接触を拒む女。ようやく実現した二人だけのディナーの場で再びはっきりした理由も証されるわけでもなく訪れる別離の場面に、ぽんと放り投げられた唐突さの戸惑いと中途半端な不思議な余韻が気に入っていたり。もしかして二人のディナーは夢だったのかも? 煙に巻かれたにしても鮮やかな手腕。立派なにわとりもなにげに上品で美しい。すれ違う男と女。街角の止まり木のようなバーのカウンター風景。ため息。
ビジュアル惚れ

@銀座テアトルシネマ
19:07 | 「や」行 | edit | page top↑