『心地よい部屋』

 1967年、チェコのプラハ。同年代の青年たちに違わず欧米のロックアーチストに夢中なミハル。パパは頑固一徹筋金入りの共産主義者で息子が髪の長いロッカーに夢中なのはもちろん気に入らないけれど、家に入り込んでくる西側の文化や思想、小物にまで難癖をつけては対抗すべく東側の「発明品」を見つけては家族の前で一席ぶってみせる。アパートの階上に住むクラスメイトのインドラにミハルは片思いをしているが彼女は親友で両親がアメリカに住んでいるエリエンと付き合っている。彼女の厳格な父親は資本主義者で大戦中に英国軍のチェコ人パイロットとして戦った兄を心から誇りに思っており、共産主義のミハルの父親とはまったくそりが合わないが、インドラの母親が亡くなった後バツいち子持ちでずっと再婚相手を探していたミハルの叔母と付き合うことになった。そして二人の婚約式の夜、ミハルは叶わぬインドラへの想いに落ち込んで大酒を飲みガスオーブンに頭を突っ込んで自殺を図る。そして間一髪のところを助け出され数日振りに目覚めた彼が耳にしたのはソ連軍が国境線を越えて侵入してきたニュースと爆撃機の轟音だった。

 プラハの春を迎えるまでのとあるチェコのアパートに住む2組の家族に起こる出来事を当時の若者文化や普通の庶民の生活なども見せつつコミカルに描いた物語。  異なる思想を持っていて互いを認めようとしない頑固一徹のミハルとインドラの父親。子供に間違いを指摘されても決して認めず憎らしいくらいの頑固さ。でもみんなが西の製品に夢中になっているところでひとりだけ「東ドイツ製のプラスチック製品を世紀の大発明と家族の前で大演説をぶって奥さんのクリスマス・プレゼントに贈ったはいいけれどを、プラスチック製のスプーンは熱湯の温度に耐えられずどろどろに溶けてしまい面目丸つぶれというミハルの父親がなんかかわいい。信じていた共産主義の親玉ソ連が同盟を裏切って侵攻してきたことにショックを受けて首をつろうとするんだけれど、冒頭では恋に理解のない家族に八方塞のミハルが同じように玄関先の東屋で首吊りを計って大失敗してるんですよね。あの日常生活から主義主張まで面子がつぶれっぱなしになってしまったお父さんはその後どうなっていくのでしょう。のんびり母さんの尻に敷かれたバカボンパパみたいになっちゃうんだろうか。

 チェコではかなり人気のあったこの映画だそうですが、端から見ていれば哀れでこっけいにも見えるそんなところが、笑い飛ばさないとやってられないとか、やっとそんな風に振り返れるだけの時間が経ったということなのでしょうか。その辺の現代史に疎い我々には少々わからないところもあるのですが、たとえばインドラの父親の兄貴が大戦のときに連合国側の英国空軍群として戦ったというのは観ていたときには?と思ったんですが、そういえば『プラハ 愛のコーリャ』のヤン・スヴィエラーク監督の『ダークブルー』はまさにそんな英国軍として戦ったパイロットの親友同士の話だったっけなーとあとから思い出した。

 国際映画祭なんかに出品されるような映画というのは、ドメスティックな内容であっても多少のバックグラウンドがわかるような描き方してあったり、インターナショナルバージョンではわざわざインサートで注釈が入っていたりすることもあるけれど、特に海外に出すことを考えられていない基本的に地元のロードショーで大入りしているような映画というのは観に来る観客がわかっていることを前提に作られていると思うので、その地域を専門に勉強していたり知識がないとちょっと見ていて置いてきぼりを食わされるような感覚を持ってしまう。そういったハンデにもかかわらずお客が楽しめる作品というのは持っている映像の力やメッセージ性で補われるところなのかと思うけれど、この映画はどうでしょうね。。ユーモアあふれる場面やカルチャーギャップは楽しめたけれど、その大人気の所以まではちょっとわかんなかったかな。でもそのもう少し深いところを知ってみたくなるような映画でした。青年たちがなかなか目に優しかったし。

 チェコ映画祭はもっといろんな映画観たかったなぁ、とちょっと後悔してます。
出てくる女の子とかネドヴェド顔だったし(笑)。やっぱ東欧系にはああいう感じが多いのだろうか?

原題:Pelisky  監督:ヤン・フジェバイク 1999年製作
出演:ミハル・ベラン、クリスティーナ・ノヴァーコヴァー、オンドジェイ・ブロウセク
@2005チェコ映画祭

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