『犬神家の一族』

犬神家の一族 オリジナルサウンドトラック

 1976年公開の横溝正史原作/市川崑監督による大ヒット作のセルフリメイク。
 市川崑監督や野村芳太郎監督、篠田正浩監督などなどが撮られた一連の金田一シリーズはテレビで放映されるたびに見てしまうけれど、でもやっぱし“金田一耕助”はヘイちゃん。よって『獄門島』『悪魔の手毬唄』『女王蜂』『病院坂の首縊りの家』とか70年代の市川監督が撮っていた作品は特に好きです。いかにも昭和終戦直後の陰なかほり、地方の言い伝えやら旧家なんかのお家騒動やらちょっと湿った壁や ふすまのにおいがしてきそうなダークな雰囲気のカメラ、外連身のあるカットに金田一が疾走する時のジャズドラムとか子供心にみててちょっと怖かったり大人の映画って感じがしたし、それはいまだに何度見てもあきません。あと欠かせないのが犯人はこの人以外に誰がいるのさっていう看板大女優の存在。オリジナルの『犬神家〜』だと、高峰三枝子さんの芝居以前に画面から漂ってくる重厚感というか威圧感たるやそれだけで圧倒されるもの。

 で今回のリメイク。他の監督によるリメイクならば、どんなに忠実に撮ったって絶対ああだこうだ言いたくなると思うけれど、市川監督ご自身のリメイクなのでとりあえず何も言うことはありません。オリジナルにほぼ忠実で、わたしが見逃していたのかも知れませんが、なにか新しいことを試みているようには(…というのもなんですが)見えなかったし。次はこうなってああなるんだよなってことが分かっていても、かえってそれを期待して待ってたりするのはあると思うので、ふむふむ納得しながら見ていたし。そうするとなぜ今セルフリメイクの必要があったのだろう、なんていう素朴な疑問も湧いてきてしまうんですが、それは映画雑誌なり岩井俊二監督のドキュメンタリーでも観に行けばわかるのかもしれないですね。

 よって比較の対象は自然とキャストに向いがちになるのは避けられないと思うんですが、ナナコはさておきやっぱ松子お姉さんがちょっと弱いかなと…。うーそれはキャストの発表時点からちょっと気にはなっていたんですが、やっぱしょうがないのかなという感じなんですけども…。ホントにホントに不届き者で非常に申し訳なく思うのですが“緋牡丹お竜”などの勇士を存じ上げない若輩者の自分にとって、富司純子さんというと多くお持ちになる銀幕女優のキャリアよりも先に立つイメージは「3時のあなた」。または菊之助くんのお母様なのです。
 それでも一番最初の懸念よりはよほど、ステキだけに留まらない迫力があって「おおーっ!」と思ったし、またキクちゃん(←馴れ馴れしい)扮する覆面なし佐清との再会場面のお芝居とかさすがによいなあというか大いなるひいき目をのぞいても ぐっと来るものがあったのですが、やっぱし化け物というかほとんど妖怪に近いオーラを放っていたオリジナルの松子さんのイメージがあると…ご本人もちょっとというかかなりやりにくかったんじゃないかなと思ったりして。

 というわけでわたしなんかよりずっとずっとオリジナル好きの方々には微妙かもしれないけれど、可もなくかといって不可もなくという新版でした。撮影も相変わらずきれいだし。
若いお客さんにはどう映るのでしょうね?

犬神家の一族
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