『それぞれのシネマ』

sore

 短編映画もオムニバス映画も好きなんですが、集めて一度に見せるのも限度があるもんで、やればいいってもんじゃないだろーなんてようなことは『パリ、ジュテーム』のときにもちらりとこぼしたような気がするんですが、その後のカンヌで常連組みによるオマージュ短編作品が上映されると聞いたときには正直頭抱えたのはいうまでもありません。あっちは5分、こっちは3分とはいえ監督35人分だって。ゲロゲ〜ロ。これは機会があってもみるかしらーなんて興味のない振りをしてみましたが、やっぱりこっそり観てしまいました。
 本当に35人もいたっけかーひょっとして「のべ」?なんてことをちょっと思ったりもしましたが、与えられているのが3分間、あと「映画」というもうちょっと絞れた題材の中でそれぞれの監督のもつカラーを活かした一筆書きのような妙が堪能できました。『パリ〜』とダブっている監督ももちろんいてやっぱ3分になっても個人的にあわんわ、と思ったものもあれば、申し訳ないけど正直、あの才気はどこへ?的な印象を持ってしまったものやらありましたけども、大半の作品は一粒ずつ大事にいただけた感じです。

 どれが一番よかったか、というとたくさんあって思い出せないんですが、一番はダルデンヌ兄弟かな。座席においてあるバッグから財布を盗もうとする少年。そのバッグからハンカチを取り出そうとしてバッグをまさぐっている少年の手に気づいた持ち主の女性が、何も言わずにそのこの手をとってそっと自分の頬に伝う涙を触らせるエピソード。いかにも彼らの作品らしく、また後味温く美しいなあと感動。あとは両親の思い出を「チーク・トゥ・チーク」の曲に乗せてアステアのダンスみたいに軽やかに温かく振り返ったクロード・ルルーシュのお話もとっても素敵だった。
 それから場内で携帯打ってひょっとして動画までとってた?行為はおいといて(…犯罪?)、ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』のジャンヌとアントナン・アルトー扮するところの修道士の問答のシーンを見ながらアンナ・カリーナが涙するという『女と男のいる歩道』を観にいって「アルトーは美しい」と携帯で友人に伝える女の子がそれを見ているこちらも、つまりアンナ・カリーナ→そのこ→こっちみたいな『アルトーきれい』って言う気持ちがスクリーンを通じて共有できてしまうようなアトム・エゴヤンのも印象的だった。
 あとはメッセージ色が強いものだといろんな人種の女性たちが『ロミオとジュリエット』に涙しているキアロスタミやら戦争映画なのか戦闘映像をみつめるアフリカの子どもたちの表情だけを追ったベンちゃん。レトロな雰囲気がよいなと思った「ズンドコ」ホウちゃん、サキイカを食べるわんこに一票のたけちゃん、あとはいつになくめちゃファンキー?だったウォルター・サレスや、やっぱりこうこなくっちゃ!というケン・ローチほかイニャリトウやコーエン兄弟などなど、書ききれないのでよしときますが、いかにもイベントムービーらしい豪華さに一級の職人芸を堪能できた作品群でした。

@2007年tokyo filmexにて上映
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